茶室でお茶を頂く時

茶碗をまわすということを

つたえ聞いている人々が

二度まわすのですか三度まわすのですか等と

しきりにたずねる。

 

このまわすというのは

二度とか三度とかいう回数ではない。

 

茶碗の正面を如何に扱うかが要◇で

二手に扱うとも三手に扱うとも、

正面を主人にむかはしむれば足るのである。

 

主人が心をこめて

面を改めて出したならば、

飲み終わってから

客は、その面を主人にむかはしめて返すのが

和である敬である。

 

 

器物を正しく扱う為には、

器物の正面を見立てることが第一である。

 

この正面を、略して面ともいう。

 

繪書とか文字とか、目ぼしいものがある時には、

この面の見立てはさまでのもないが

一寸工夫を要するものもある。

 

たとえば模様もない茶碗では、ただ主人の好みが正面の見立てとなる。

かく定められた面を自分にひきあてて扱うことが原則で、

これを客に渡す時は、その面を改めて客に向わしめる。

 

 

所作と言葉 2

馳走というのは、字の示す通り

馳せ走るのである。

 

卽ち主人自ら◇走◇力し、客をもてなすことである。

この義に則って

 

主人が客の為になす所作は、凡て

周到恭敬にして、條理に從い、一物を動かし

一器を拭うにも

能清能敬の容を具ふる事が必要である。

 

 

 

所作と言葉 1

心の働きが、

時に応じた動作となる、

 

これを所作という。

 

言い換えれば、

主人にありては馳走ぶり、客にありては客ぶりである。

 

不昧公の所論「主人は◇相は客の◇相、客の◇相は主人の◇相」

という、主客和楽の境が開かれるのである。

 

馳走 客への供応。転じて、りっぱな料理。

供応・饗応 酒や食事を出して人をもてなすこと。

相和する 互いに親しみ合う。仲よくする。 一つに交じり合う。調和する。
互いに声を合わせる。

不昧公 松平 治郷(まつだいら はるさと)は、出雲松江藩の第7代藩主。直政系越前松平家宗家7代。江戸時代の代表的茶人の一人で、号の不昧(ふまい)で知られる。